最期
私がもっとも恐れていたのは、モモの最期に私がそばにいないことでした。
モモの母親のクリは実家の犬でしたが、看取ったのは私でした。
亡くなる一週間ほど前から食欲が顕著に落ち、散歩にも行きたがらず、体に触られるのも嫌がるようになりました。亡くなった夜はかなり苦しみ、彼女は普段はモモと違って家の中に入れる習慣はありませんでしたが、実家の私の部屋で息を引き取りました。
その瞬間は劇的ですらありました。
頭を持ち上げて一声高く哭いたのを聞いて、あっ死ぬんだ、というのが私にもわかり、クリはそのまま首をのけぞらせるように崩れ落ち、目がゆっくりと光を失いました。そこへ様子を見に来た弟たちが入ってきて、ほんの半秒ほどの差で、クリは私だけの前で命を終えました。
そばにいたからといって何かができたわけではありませんが、もしも誰もいなかったら、誰かにいてほしいとクリだって思ったのではないかと思います。
私の最大の恐れは、モモの最期に関しても回避されました。
苦しみを取り除いてあげられなかったことはいつまでも辛い記憶ですが、腕の中で亡くなってくれたのが、せめてもの救いです。