選択
退院した当日はモモはずっとヒーヒー泣いていて、病院にとって返し痛み止めを打ってもらい、やっと静かに眠り始めました。
翌日からはゆっくり、ゆっくりと、少しずつ、回復していきます。
包帯がとれて抜糸する頃、今後の治療の選択肢を提示されました。
リストの最初にあった抗がん剤は、病院に預ける必要があるしモモの性格ではそれがストレスになるから止めた方がいいだろう、と最初から除外された形で出てきました。
これがまたショックでなかったといえば嘘になります。覚悟とか納得とかいったことを書いてきましたが、手術後の治療方針を獣医のT先生と相談するにあたって、私はまた、自分がどこかに無意識の望みを置いていたことを思い知らされます。
しかしそんな未練がどこかにあったからこそ、後になってみれば、T先生が始めから抗がん剤をはずしたのは、我々にとってありがたいことでした。
3月の末になって、元のM動物病院にやっと届いた病理検査の結果を一応聞きに行ったときには、抗がん剤は転移のあるガンにこそ使うべき薬なのに、と言われました。M動物病院で治療を続けていれば、それを第一の選択肢としてあげられたことでしょう。治る病気ではない、と余命をカウントする一方で、強い副作用のある薬剤をなぜそんなに勧めるのか、理解に苦しみます。強力に断ることは可能だったと思いますが、治療に対する姿勢がそもそも違うわけですから、私は最後まで納得したり満足したりすることはなかっただろうと思われます。
いずれにせよ我々は、命を救うことではなく、QOLを考える段階に、本格的に突入しました。